海外で現地採用として働いていた頃のことです。日本と違って給料が銀行振り込みになっていない企業が多く、私が勤めていた会社でも給料は小切手を手渡す形で支払われていました。

とても小さい会社で従業員が4人しかいなかったので、営業は実質社長ひとり。せっかく売上が立っても回収がまともにできていないせいでいつも台所事情は苦しく、業者への支払いを2か月、3か月と待たせることもしょっちゅうでした。

従業員への給料の支払いも遅れがちで、雇用契約上は毎月25日が給料日だったのに、翌月になることがよくありました。その頃お付き合いしていた彼のお誕生日は月初め。そして、恐れていたことが起こりました。

彼のお誕生月になっても、前月の給料が支払われないのです。現地採用の給料は、駐在の人に比べれば本当に安くて、私のやりくりはいつもギリギリ。しかも、その前の月に大きな臨時出費があって余剰資金がなくなってしまったため、月が替わった時には日本円で2000円ぐらいしかお財布に入っていませんでした。

銀行口座もほぼ空っぽ......定期預金を崩すのはさすがにためらわれました。その年の彼のお誕生日はちょうど週末でした。金曜日の夕方、外出予定があった上司は、給料のことなど一言も触れずに「今日はこの後戻らないから」と言ってさっさと出かけてしまいました。

普段のデートでの食事はほとんど彼が持ってくれていたので、せめてお誕生日ぐらい美味しいものを私がご馳走するねと話して、その町で評判のいいレストランをかなり前から予約済み。小さいお店なので支払いは現金のみであることも知っていました。せっかくのお祝いなので、手元にお金がないからとキャンセルしたくはありません。

どうしよう......と思っていた時に、ふと、自分のクレジットカードでキャッシングができることに気づきました。それまでお金を借りた経験は一切なく、クレジットカードのキャッシングなど無縁だと思っていたので、使ったことが無かったのです。でも、背に腹は代えられない、明日使える現金が手に入るならと、家に帰る途中にあった銀行のATM機に向かいました。

正直、そのATM機でキャッシングの手続きが取れるのかも知りませんでしたし、画面を見るのも初めてで、本当に心臓がドキドキしました。恐る恐る自分のクレジットカードを入れてみると、画面が切り替わって、選択肢にどうやらキャッシングがあります。日本円で3万円分ほどの金額を指定して、あっという間に現金ゲット。これで明日お祝いできる、と思ったら全身の力が抜けて、その場に座り込んでしまいました。

彼の誕生日を無事にお祝いして、彼にもすごく喜んでもらいました。後日、クレジットカードの利用明細に書かれたキャッシングの履歴を見たら、手数料は日本円で700円程度。安くはありませんが、おかげで彼の誕生日を祝うという大事なイベントの機会を失わずに済んだので良かった、と思いました。

これまで、機械で簡単にお金を借りられるキャッシングという仕組みに「そんなことをするから自己破産する人とか出てきちゃうんだ」と反発を感じていたのですが、利用者が上手に使えば実はとても便利なサービスなんだと気づきました。

でも、やっぱり借金をすることには抵抗があるので、それ以来キャッシングは利用していません。